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作成:2008.8.1

ヨーロッパ ブライダル視察報告

MC 恋塚太世葉

E-mailpeewee@k6.dion.ne.jp

 

7/27/1312日間ヨーロッパ(ドイツ→チェコ→オーストリア→ソロバキア→ハンガリー)を外遊した。これらは島国日本と異なる陸続きの国々であり、今やEU連合加盟国内ならば車での国鏡越えもノンストップになっている。今ではご近所同士で喧嘩をしている場合でなく、EUメンバーとして連携して力を合わせようということであろうし、この連合体制には大変大きなパワーを感じた。

また、訪問国のうち、チェコ、ソロバキア、ハンガリーは社会主義から資本主義へ移行した国である。この3国の通貨はまだユーロに統合されたおらず、チェコ、ソロバキアはコルナ、ハンガリーはフォリントという通貨だった。そして1人当たりのビールの消費量世界一で有名なのがチェコである。国産ビールの価格はミネラルウォーターより遥かに安かった。

話を戻すと、今回はドイツのドレスデン、チェコのクトナーホラの2箇所で、結婚式を挙げたカップルを目にすることができた。

今回興味深かったことがある。訪問した国々では結婚指輪を右手の指にするということである。陸続きの国々ということで、ブライダルの慣習についても共通性があるかなど、各国のブライダル事情を、日本と異なる部分や、特徴的なものなど、見聞したものの中から下記の順にて報告する。貴殿の今後のブライダルビジネスの参考になれば幸いである。

 

1.ドイツの宗教事情と結婚式事情

2.チェコの結婚式事情

3.オーストリアの結婚式事情

4.ハンガリーの結婚式事情

5.総括

以上

恋塚太世葉(こひづかたせは) URLhttp://www.h5.dion.ne.jp/~peewee

l         ブライダルMC

l         全日本ブライダルMCアライアンス 会長

l         全米ブライダルコンサルタント協会 認定プロフェッショナルウェディングヴェンダー

l         WeddingsBeautiful Worldwide 認定 ウェディングスペシャリスト

著書:ブライダル司会ハンドブック(杉並けやき出版)

ブライダル博士のハンドブック(杉並けやき出版)

        


 


1.ドイツの宗教事情と結婚式事情(訪問地:ベルリン、ドレスデン)

 

ドイツの国土面積は日本とほぼ同じであるが、人口は日本の約半分、そして日本のような山脈がないために、生活圏は広くとてもゆったりしたイメージのところである。南はカトリックの色が濃いが、北に位置するドレスデンはプロテスタント・ルーテル派のマルチンルターが活躍した場所の1つであり、その付近はカトリックに比べプロテスタントが多いと言える。そのドレスデンを訪れたところ、街中の公園で結婚式の一行が記念写真を撮っていた。この後、パーティ会場に移動するという雰囲気だった。

ドイツの婚姻は、市役所の戸籍登録所にて結婚式セレモニーを行うことで成立する。これはどちらかと言うと事務的な手続きという色が強く、その後、洗礼を受けている人であれば、教会に行って挙式を行っている。

ドイツには宗教税というものがある。対象は洗礼を受けた人となるが毎月、所得の10%を税金として国へ多納める。過去、教徒たちが宗教税は不当と訴訟を起こしたが、裁判では国が勝訴し、宗教税が現在でも存続している。それが理由ということではないと思うが、国全体で見ると信仰心は薄いように感じた。結婚式の半分以上は人前結婚式であり、また、挙式・レセプション会場は教会または、専門式場、レストランというのが一般的である。ドイツでは結婚指輪を右手の薬指にするのが通例である。

キリスト教教派において、カトリックはステンドグラスなど派手な装飾に溢れ、プロテスタントはシンプルなものが多いのだが、ここでは逆であった。写真のCは宗教改革の主役の一人であるルターの像とプロテスタントの聖母教会外観である。そしてDはその聖母教会の内観であり派手な装飾がなされていた。一方Eはそこから歩いて5分のフリードリッヒ3世の宮廷教会(カトリック)で内装は実にシンプルであった。フリードリッヒ3世はドイツでは新教のプロテスタントを立場上支持したいのだが、ドイツならびにポーランドの王でもあったため、カトリックも信仰しなければならないと言う背景があり、このような状況が起きた。両方の教会を目にした私は実に印象深かった。

@ ベルリンのドレスショップ。デザインはシンプル。

A ドレスデンで見かけたウェディング一行。

B 同左。

C ドレスデン。マルチンルター像と、聖母教会(プロテスタント)

D 聖母教会の内観。派手だ!

E ドレスデン。フリードリッヒ3世宮廷教会(カトリック)。


2.チェコの結婚式事情(訪問地:プラハ)

 

チェコと、ソロバキアよりも、チェコソロバキアの方が日本人には馴染みがあるかもしれないが、現在はチェコとソロバキア各々に国が分かれている。チェコソロバキア時代は外国からの観光客を受け入れなかったが、現在は各々が資本主義に移行し、観光を新しい資源にしようと活気も見えた。

今回は、両国を訪れたが、チェコ(首都プラハ)の事情をお話すると、こちらも婚姻は役所の戸籍登録所にて式を行い婚姻届なる書類を提出することで結婚が成立する。

この国は無宗教者が多いそうだ。カトリックが45%、プロテスタントが5%、残りの大半は無宗教者である。普通は崇める神様がいなくても、天や、太陽など自然に感謝するというような信仰心を持つ民族は多いのだが、この国にはそういうものもないらしい。

ここプラハは、街並みもお城も教会も歴史を感じさせるおとぎの国のような雰囲気である。外国からカップルが海外リゾートウェディングとして訪れるパターンもあり、日本から来るカップルも月に1組のペースで結婚式をしているとのことだった。旧市街地と呼ばれる中世の雰囲気の残るエリアにセント・ニコラス教会(カトリック)という教会があるのだかここは日本人でも挙式をすることができる。挙式の後は、その旧市街広場を馬車で一周し、一般市民からたくさんの拍手をもらい祝福を受けるそうだ。

クトナーホラという、昔、銀鉱で栄えた田舎町を訪れた。日本で言うと、昔は炭鉱で栄え、今では静かな町という感じのところである。当時はプラハに次ぐ第二の都市ということで、チェコで2番目に大きい教会である世界遺産指定の聖母マリア大聖堂がありここを見学した。礼拝堂の参列者の座る椅子(ベンチ)の中央側にリボンと花で飾る、ピューエンズがあった。これは明らかに1時間以内に結婚式が行われた形跡である。どこか近くのレストランでパーティが行われているのだろうと大聖堂を後にして歩いていると、路上に駐車しているウェディングの一行の車を見ることが出来た。欧米では新郎新婦が乗る車はハイヤーでも、レンタカーでも、自家用車でも構わないがリボンと花で装飾され、同行する友人達の車もリボンで飾られる。移動中は、クラクションを鳴らしながらで走り、沿道からはたくさんの拍手が沸く。日本では全く考えられない光景だ。これらのウェディングカーを発見したのであたりを見回した。丁度近くのレストランから、パーティ前の新郎新婦が二人きりで出て来て、レストランの隣の公園を散歩していた。これは最近、欧米で行うカップルが増えているブライダルプレゼンテーションというもので、挙式やパーティの前に二人きりの時間を作り、静かな時を過ごすというものである。 

日本ではこんな穏やかな時間は絶対に取れない。もちろん会場側の都合でのんびりしていられないからである。この国でも結婚指輪はドイツ同様に右手の薬指に贈り合う。

@ 旧市街地のセント・ニコラス教会。

A セント・ニコラス教会の内観。

B 挙式後はこの馬車で広場を一周するそうだ。

C チェコの街中で見かけたペーーパーアイテムのウィンドウ広告。

D 同左。

E クトナーホラの聖母マリア大聖堂。

F 聖母マリア教会。この花がピューエンズである。

G 新郎新婦が乗る移動用の車。

H ウェディング一行の車達。

I 宴前の新郎新婦がレストランから出てきた。

J 二人だけで過ごすブライダルプレゼンテーション。

K プラハ市内のドレスショップ。

 

 

3.オーストリアの結婚式事情(訪問地:ウィーン)

 

オーストリアは、ハプスブルグ王朝が台頭していた国である。観光名所のハプスブルグの、夏の別荘宮殿であるシェーンブルン宮殿には、ウェディングのポスターが貼られていた。聞いてみると日本人でもここで挙式を挙げさせてくれるそうだ。

宗教事情としては、オーストリアは人口の75%がカトリックであり、宗教税はない国である。この国の結婚式形態は、挙式(セレモニー)は市役所の戸籍登録所で行政官の司式によって執り行われる。法律に則っての形式的なものではあるが、法律上は市役所での挙式を以って戸籍への登録が行われ結婚が成立する。日本人の感覚で想像すると?市役所の会議室やロビーなんて殺風景だと思い勝ちだが、同様にイタリアや、オランダなど、市役所にはセレモニー用の部屋がありもちろん絨毯張りで、装飾もしてあるのである。

市役所(行政)がなぜ婚姻に介入しているのかというと、ヨーロッパでは、日本と異なり、婚姻届書類は単なる紙切れ1枚であり、それよりも二人の間の愛情が大切であると言う考えがあることから、戸籍を登録せずに結婚生活を始めたり、子供が生まれても届出を行わない夫婦もいる。こういう国は決まって、戸籍の整備が進んでいないという状況である。だからこれらの国では戸籍の整備の一環として、結婚式というタイミングを行政がしっかりと見届けるのである。

ところで、日本はというと戸籍の整備率は非常に高い。よって日本はこれからも行政が結婚に関わることはないと言えよう。話は戻るが、市役所での結婚となると、新郎新婦が集中する。待合室はドレス姿のお嫁さんが座る所もなく立って待っていたりするわけだ。

そして、キリスト教徒ならばその後、教会へ出向き、改めてバージンロードを歩き挙式を行うという流れとなる。指輪はドイツ、チェコ同様に右手の薬指にする。

@ ハプスブルグの夏の別荘宮殿であるシェーンブルン宮殿。

A シェーンブルン内のウィンドウにあった広告。

B 王室が宴会でテーブル中央に飾ったセンターピース。豪華。

 

 

4.ハンガリーの結婚式事情(訪問地:ブダペスト)

 

ハンガリーは、ヨーロッパの一員であるが民族としてはアジアの騎馬民族の血も入っており、どこかしら、親しみのある雰囲気だった。そして首都ブダペストは街並み自体が世界遺産となっている由緒あるところである。街から車で1時間ほどの所に位置するゲデレー宮殿というところを訪れた。1700年代に建てられたもので、元々は貴族の宮殿であったが後にハプスブルグの夏の離宮として移管された。現在は入館料を取り、建物の一部を公開している。外観は日本で言うところの大きめの1軒家ゲストハウス(迎賓館)ウェディング会場のような感じであった。演舞場ルームは、有料で貸切にすることができ、ウェディングレセプションを行うことができる。広さにして、160平米というから換算すると50坪ほどで、日本の宴会場でいうと円卓が6〜7個入る感じのお部屋だった。

ハンガリーの現地の方にお話を伺ってみた。ハンガリーの結婚式は1日仕事というか、丸一日、一晩を費やすようだ。挙式当日、新郎新婦は午前中にカメラマンと出かけ旧跡や自然の中で写真を撮る。午後には市役所の戸籍登録所で結婚式セレモニー(法律上必須)をしてもらい、その後、キリスト教徒ならば教会で挙式を行い、夕刻からは公共会館(文化会館という言い方をしていた。)などの宴会場や、レストランなどで披露宴パーティを夜通し行う。欧米の披露宴ではダンスタイムが付き物であるが我々になじみのあるアメリカを例に取ると、ダンスを踊る順番は

@新郎新婦(夫婦初めての共同作業の位置づけ)

A新婦+新婦父(ラストダンスと言って、お別れのダンス。)

B新婦+新郎父、

C新郎、新婦が各々全員と踊る

となるのだが、ハンガリーでは、

 

@新婦+新婦父(ラストダンス)

A新婦+新郎父

B全員

C新郎新婦

となる。披露宴は夜中の0時を回るまで行われる。0時を回るとお嫁さんは純白のドレスから赤色のドレスに色直しをする。これは0時を回るということは昨日までは、結婚式の花嫁であって、日付が変わる今日からは花嫁ではなく奥様になるということを意味する。そして散々酔っ払って踊ったゲスト達にはハンガリーの名物料理の、パプリカで赤く色づいた煮キャベツのスープが振舞われる。これは酔い覚ましのためという料理である。そして、中締めになると新郎新婦はゲストを残し、その場を後にし、二人だけで時間を過ごすのである。

お話を聞かせて頂いた、ハンガリー人の方は、18年前に結婚式をしたそうだが、家の近隣に公共の宴会場がなかったために、自分の家の庭に大きなテント屋根を張りその中で披露宴パーティをしたそうだ。また、この地では祝い事に豚を一頭丸焼きにして振舞うという文化もある。ハンガリーでも結婚指輪は右手の薬指にする。

@ 戴冠式も行われたマーチャーシュ教会。今は結婚式も行われる。

A 聖イシュトバーン教会。とても大きいが、結婚式も行われる。

B ゲデレー宮殿(中庭から撮影)。中央部分が演舞場。

C ゲデレー宮殿。エントランス。正面玄関側から。

D 披露宴パーティにも貸してくれる演舞場ホール。

E 同上、演舞場を窓側から撮影。

F ゲデレー宮殿。中庭を臨む。

G キャベツの赤スープ。

H ブダペスト市内のドレスショップ。

 

5.     総括

今回訪問したのは、いわゆる陸続きの大陸にある国々だった。島国と異なり、各々に交流も密であるし、統合・分裂なども繰り返えされ、多民族の行き交うエリアで、結婚式にも共通性が見えた。

今回興味深かったのは結婚指輪をする指についてである。今回調べた限りでも、ドイツ、チェコ、オーストリア、ソロバキア、ハンガリー、スペイン、・・・これらの国では、婚約指輪を左手薬指、結婚指輪は右手薬指にする。

ドイツで話を聞くことが出来た既婚のドイツ人は「日本人は一生婚約ですね。」と笑いながら話していた。まあ、お互いちょっとしたカルチャーショックである。各国で聞いたところ、「他国のことは知らないが、うちの国はこうだ!」という回答が返ってくるのだが。複数の国を並べてみた結果、今回の外遊で1つの仮説を導き出すことが出来た。

この右手薬指志向の国々の多くは、650年間続いたウィーンのハプスブルグ家に一時は統治されていた地であるということである。ハプスブルグは、戦争は弱かったが、政略結婚戦略で領土を広げ、イギリス、フランス以外のヨーロッパ全土を統治していた時代もあったほどだ。この大帝国が1つでいられたことには理由がある。カトリックという宗教を上手に活用したのである。宗教と言うのは、言葉や、文化の違う民族でも、一つにまとめることが出来る恐ろしいツールである。皆がハプスブルグ配下のカトリック教徒であれば結婚式形態も近いものになることが容易に想像できるのである。但し、これは仮説に過ぎないため、更に調査・検証は必要である。

一方日本式というわけではないが、左手薬指志向はイギリス、フランス、イタリア、アメリカ・・・と言ったところである。

これらはユダヤ教を除いて、宗教宗派に関係なくそうなっているように見える。ユダヤ教の場合は結婚指輪を右手の人差し指に対して贈り、後日受け取った本人は自分で左手の薬指に付け換えるということを行う。

どちらにしろ、この結婚指輪の右左に関しては非常に興味深く、今後他国の事情をリサーチし、世界地図程度は作りたいと思う。「○○国では右ですよ。」など情報をお持ちの方は是非お寄せ頂きたい次第である。

以下は、現段階での調査結果である。

 

国別結婚指輪をする指一覧

国名

左手薬指

右手薬指

 

国名

左手薬指

右手薬指

日本

 

 

ドイツ

 

アメリカ

 

 

オーストリア

 

イギリス

 

 

ハンガリー

 

フランス

 

 

スペイン

 

イタリア

 

 

ポルトガル

 

オーストラリア

 

 

チェコ

 

デンマーク

 

 

ソロバキア

 

ロシア

 

 

ポーランド

 

国を問わず、ユダヤ教の場合、挙式では右手の人差し指に結婚指輪を贈り、挙式後に自分で左手の薬指に付け替える。


 

おまけ
 

日本からドイツまでのフライト時間は11時間、そしてハンガリーからの帰国経路は、ヨーロッパのハブ空港であるロンドン、フランクフルト、アムステルダム、パリのいずれの経由になるだろうと、帰りはロンドン経由を指定にして、ロンドンで2泊する行程にしていた。ロンドンで、金曜、土曜と町並みを眺めてきた。ちょうど土曜日はノッティングヒルゲート地区で、蚤の市が開かれているため、よく行くお店に足を運んだ。目的は花嫁の左足に入れて挙式に臨むと裕福な家庭になるというおまじないの骨董品の6ペンスコイン探しだ。毎度訪れる露店が昨年同様同じ場所にあり、コイン探しに没頭した。6ペンスコインは1967年に造幣を終了し、今では古銭となるため骨董が集まることで有名なノッティングヒルゲートにはそれなりの数が出回るのである。早速コインショップにあった、世界のコインの山のから探し、見つけたのが540枚、手は真っ黒になっていた。顔見知りのオーナーと交渉して買い付けた。

 

@ ノッティングヒルゲート地区のポートベロー通りが蚤の市街。

A ポートベローの蚤の市。

B 青空市場状態。お店よって値段が様々。ここは高かった。

C 毎度訪れるお店。かなりの種類、数がそろっている。

D コインの山から6ペンスを540枚ほど見つけ出し購入。

E オーナーさんと。Next Yearもまた来いと言われた。

 

 

以上