作成:2016/9/20

ドイツ ブライダルレポート

 

MC 恋塚 太世葉

URLhttp://www.h5.dion.ne.jp/~peewee 

E-mailpeewee@k6.dion.ne.jp

この夏、ドイツを訪問した。

島国日本からすると、国ごとに結婚式文化が異なるというように考えがちだが、ヨーロッパ全体が、キリスト教など宗教に根ざした文化圏であることから、国を問わずカトリック、プロテスタントそれぞれに共通するセレモニーが行われている。一方、言い伝えや慣習という面からすれば、ドイツ特有のものももちろん見る事ができる。プロテスタント発祥の地でもあるここドイツのウェディングについてレポートする。

 

【写真は世界遺産シュパイアー大聖堂をバックに歩くウェディングパーティ】






 

1.ドイツの国民性

ドイツと日本にはたくさんの共通点がある。国土の広さはほぼ同じ(但しドイツには山脈がないため住める場所は日本より多い)、軍国主義に走り世界大戦で惨敗、戦後は0からのスタートをし、短期で復興を果たし、経済大国になった、自動車産業が世界トップレベル・・・これらは、両民族に共通する勤勉さから来ているのだろう。ほかにも共通点はある、アメリカ人のように街中で大声で話すようなことはしない、イタリア男のようなチョイ悪気質もなく、そして恋には奥手である。

ドイツ国民は結婚相手を決めるにも何度も何度もデートを重ね、決断するそうだ。そしてデート費用は割り勘が普通。合理的という言葉が一番しっくりくる。この度のドイツ渡航で、スターバックスのお店に入った時のこと。日本では、土地土地でオリジナルデザインのタンブラーを販売しており、それをコレクションしている人もいるが、ドイツのスターバックスにはそれがなかった。ドイツの国民性として、ものをコレクションするという考えはないそうだ。まさに「合理的」である。

 

2.ドイツの宗教観

ドイツはカトリック+プロテスタントのキリスト教が6割を占める。ドイツ連邦統計庁の資料に寄ると、カトリック(29.9%),プロテスタント(28.9%),イスラム教(2.6%),ユダヤ教(0.1%)。ご存知の通り、プロテスタントは1649年宗教革命で、ドイツ北部のドレスデンにて、ルターによって興された教派。ドレスデンのプロテスタントの大聖堂は、すぐ近くにあるカトリック教会よりも実に豪華だ。また、先進国どこでもそうだが、若者の宗教離れが進んでおり、ドイツでもその現象はあると言う。ドイツには教会税という税金があり、キリスト教徒には所得税金額の10%相当が加算徴収されている。消費税が19%という税金大国ドイツである、宗教に興味がなく、少しでも節税したいと考える若者層のキリスト教会離れは後を立たないという。

 

3.結婚の手続き

日本では、予め記載した婚姻届を国内の好きな場所の市役所の窓口へ提出することで婚姻が成立するが、

ドイツの結婚の手続きはというと、新郎または新婦いずれかが住所を登録している管轄市役所に足を運び、戸籍登録課の結婚式専用ルームにて簡易的なセレモニー(20分程度)を行う。セレモニーのメンバーは、司式者役の市職員、新郎新婦、証人・付添い人(アッシャー、ブライズメイド)、親族等ゲストとなる。進行内容は、市職員が結婚に関する法律を読み上げ、それに同意した証として新郎新婦が、婚姻届にその場で署名をするというもの。行政がこのようなことを行うにはきちんとした理由がある。ヨーロッパに共通することだが戸籍の整備が未だ進んでいない。結婚などのタイミングで少しづつでも整備していこうという考えである。よって、「ドイツの結婚手続きは市役所で人前結婚式が義務付けられている」ということになる。費用は5,000円弱といったところだ。

このセレモニーを挙式と捕らえるカップルもいれば、キリスト教徒の場合は、市役所人前式は事務手続きとし、その後、教会へ移動し、キリスト教挙式を行うというパターンもある。

キリスト教挙式だが、新郎または新婦いずれかがキリスト教徒であることが条件となる。先に述べた教会税を支払わない(キリスト教会から脱退した)者はキリスト教会では結婚式はできないということにもなる。教会での結婚式には人気もあるため、結婚を機に教会から脱退すると言うパターンもあり、ちょっとした社会問題になっている。

 

4.ドイツの花嫁衣裳(ウェディングドレス)

新郎新婦の衣装だがドイツ特有の事情が見られる。デザイン云々ではない。日本のように式場、宴会場が同一である、ホテルやゲストハウスであれば、ウェディングドレス姿の花嫁の移動は容易であり、どんな長いトレーンのドレスでも問題はないが、ドイツでは、ドレス姿で市役所に行き、その後、教会や、レストランなど宴会場へまた移動となる。披露宴では後半にダンスタイムがありそして、お色直しもないことから、1着を長い時間着用、移動も伴うことから選ぶドレスはシンプルで動きやすいもの、というのが条件になっているようだ。

市役所結婚式だけで結婚式を済ませるカップルは略装というか衣装もシンプルで新郎はスーツにネクタイ、花嫁は、白のワンピースなんていうことも多いようだ。また、ドイツでは、レンタルドレスは少なく、ドレスショップで購入するのが一般的である。ドレスショップにはドレスがたくさん並んでいるが、これはデザインのサンプル、デザインを決め、花嫁のサイズを指定し、取り寄せるため、在庫のある、なしで納品時間も異なる。

 

ボンのドレスショップ Amica

ボンのドレスショップ Amica

 


 

5.市役所結婚式

土曜日のお昼前のこと、ドイツ南部のシュパイアー市の市役所に行ってみた。

キリスト教圏では、結婚式は土曜日に集中する。日曜は礼拝の日であり、安息日である。ドイツ人は日曜日はしっかり休むという考えもある。この市役所のそばには大きな公園があることから、市役所で挙式→公園まで歩いて写真撮影→車で披露宴会場(レストラン等)へ移動と言う流れで動いており、海外では珍しく?公園で花嫁さんのニアミスも見られた。

市役所近くの公園

公園にて 花嫁さんのニアミスシーン

市役所結婚式では新郎新婦には付添い人が必要となるため、いわゆる、アッシャーとブライズメイドがいるのが一般的なスタイルとなる。公園でもアッシャー、ブライズメイド一緒に写真を撮っていた。

シュパイアー市役所エントランス

赤い車から降りてきた新郎新婦

市役所内 挙式待合スペース

市役所内 挙式場

市役所内 挙式前風景

市役所内 挙式前風景

 

6.披露宴パーティ

ドイツの披露宴は宴会である、飲み食いをし、後半は、みんなでダンスタイムをして盛り上がる、これは、宗教を問わず、欧米の結婚式の定番スタイルでもある。流れとして、迎賓、ゲスト着席、新郎新婦入場、新郎父挨拶、ベストマン乾杯発声、食事・歓談、ダンスタイム、デザートタイム(ケーキ入刀)、ブーケトス、中締め、ダンスタイムは続く・・・。

 

7.ドイツのウェディングカー

先に述べた通りドイツでは結婚式の日は車移動が伴う。新郎新婦専用車はお花で飾り素敵だった。

ドイツ車 フォルクスワーゲン

アウディワゴン、自家用車のようだ

可愛らしいフィアット

FORD ドアミラーにお花をつけていた

 

8.ドイツの結婚式の風習

ドイツ名物の結婚式の慣習をご紹介する。

 

・結婚指輪

ドイツでは、婚約指輪は左手薬指に、結婚指輪は右手の薬指に着ける。これは、ドイツ特有のことでもない。この形式の国は他に、オーストリア、ハンガリー、ポルトガル、スペイン、ロシアなどがある。ドイツ人が言っていたが、「日本人は左手の薬指に結婚指輪するって、一生婚約しているみたいだ」との事。文化の違いである。

 

・ポルター アーベント

挙式の前夜祭パーティのこと。知り合いがたくさん新郎新婦の自宅に集まりお庭でBBQ(ソーセージ)やビールやワインを食しお祝いする、そしてゲストはみんな、自分の家から、不要なお皿など陶器を持参し、地面に叩きつけて、割り始める。その破片を新郎新婦が拾って片付ける。酔っ払ったゲストは次々に割り始めては、新郎新婦はほうきと、ちりとりを使って片付け、ゴミ箱へ運ぶという「いたちごっこ」である。日本であれば、「割れる」というのは縁起が悪いが、ドイツでは、「破片は幸運をもたらす」と言う言葉があるそうだ。

また、古いものは壊して、新生活は新しいものをそろえていこうと言う考えもあるそうだが、リサイクル国家のドイツというイメージからすると理解に苦しむ。

補足だが、陶器の破片は幸運だが、ガラスの破片は不運なのだそうだ。そして、デパートではこのポルターアーベント用のお皿も販売されているそうだ。

尚、前夜祭と記載したが、翌日寝不足や二日酔いでの結婚式とならないよう、実際は挙式の23日前に開催なんていうのが多いらしい。

 

・披露宴2次会での花嫁の誘拐ゲーム

友人達が花嫁を連れ出し数名で近隣の別の居酒屋さんで飲み始める。新郎は新婦を探し回る、新婦を発見すると、そのお店の飲み代は新郎が支払う。

 

・二人の共同作業 のこぎりで丸太切り

披露宴で、二人の共同作業として?のこぎり使って、二人で用意された丸太を二人で切り落とす。

 

・花嫁のヴェール

夜遅くまでビールを交えるドイツの披露宴パーティだが、真夜中に花嫁のヴェールが外される。そして、次に結婚する女性友達へプレゼントされる。

 

・白いシーツくぐりぬけ

白い大きなシーツの中央に、新郎新婦がゲストの前で大きなハートの形の切り抜きを入れる。友人たちがそのシーツを垂れ幕のように持ち、新郎新婦はそのハートをくぐり抜ける。

 

 

 

−日本の引き菓子の定番のバームクーヘンについて−

本場ドイツでは、バームクーヘンはお菓子というより特別な時(クリスマス)に食べる特別なケーキの位置づけである。一層一層焼き上げる(年輪?)には高度な職人技が必要になり、そして、焼き上げるにもオーブンやかまどを使わず専用の器具が必要となることなどから、一般のケーキ屋さんでは目にする事もなければ、ドイツでは、「バームクーヘン? 名前は聞いたことがあるよ」という人もいるほどだそうだ。

そんなことから、ドイツの結婚式にはバームクーヘンは登場しない。では、「バームクーヘンの断面の年輪は長い長い人生を意味し、長寿を願う縁起物、引き菓子には最適です!」は誰が言った事なのだろうか?何のことはない、日本のバームクーヘン業者が結婚式場に引き菓子として売り込むために考えたトークでしかない。そんな話を聞くと思わず笑ってしまいそうになるが、これは実にビジネスのヒントになる。海外の洒落たものを日本に持ち込み、日本向けのストーリーを展開し、それを商品化するというパターンである。

尚、バームクーヘンを食べる国ランキング世界第一位は日本、世界一長いバームクーヘンを焼き上げたギネス記録は日本にあり、そして、日本で一番使われているドイツ語は「バームクーヘン」だそうだ。

 

街中で見かけたハンガリー風バームクーヘン

ドイツの絵葉書 ドイツは女性が強い?

 

 

 

 

 

恋塚太世葉(こひづかたせは) 

l  ブライダルMC

l  全日本ブライダルMCアライアンス 会長

l  全米ブライダルコンサルタント協会 認定 上級ウェディングヴェンダー

l  Weddingsbeautiful Worldwide 認定 ウェディングスペシャリスト

著書:ブラダル司会プレミハンドブック(杉並けやき出版)

ブライダル博士のハドブッ(杉並けやき出版)