作成:2013/10/10
アイルランド ブライダルレポート
MC 恋塚 太世葉
URL:http://www.h5.dion.ne.jp/~peewee
E-mail:peewee@k6.dion.ne.jp
この夏、アイルランドを外遊した。ご存知の通り、アイルランドと名の付く国は2つ、北アイルランド(UK連合王国)と、アイルランド共和国である。前者は、通貨がユーロ、スピードメータはKm(キロメートル)表示、郵便局のポストは緑、後者は、通貨はポンド、スピードメータはマイル、郵便局のポストは赤・・・。
と言いながらも同じケルト民族という意識があったり、両者とも、車は左側通行だったり、路線バスはダブルデッカー(二階建てバス)が走っていたり、共通する部分も多々あり、両者には実に魅力を感じる。
ブライダルに関しては、宗教に根ざした結婚式が多いヨーロッパと言う観点からすると、北アイルランドはイギリス国教会(プロテスタント)、カトリックが半々、アイルランド共和国はカトリックが90%を占めるという状況である。カトリックとプロテスタントの考えの相違なども色濃く文化に反映されているようだ。
この度の外遊は、北アイルランド2泊、その後、国境を渡り、アイルランド共和国に4泊というスケジュールであった。
婚姻に関する法律では、北アイルランドは、UK連合王国に準じた考えが大きく占めることもあり、UKに関するレポートは別途発行の恋塚英国ブライダルレポートを参照頂くとして、本レポートでは、アイルランド共和国で見聞してきた、現地の結婚式についての取材、現地で購入した書籍などを元にレポートする。
・ ブライダルMC
・ 全日本ブライダルMCアライアンス 会長
・ 全米ブライダルコンサルタント協会 認定 上級ウェディングヴェンダー
・ Weddingsbeautiful Worldwide 認定 ウェディングスペシャリスト
0.アイルランド共和国と、北アイルランドの国境
この写真の小川はアイルランドと北アイルランドの国境である。日本で言うと、県境程度のものである。車を降りて、ゆっくり徒歩で橋を渡ってみた。片側1車線の普通に自由に行き来できる橋だが、橋を渡ると、通貨も変われば、消費税率(アイルランド共和国21.5%、北アイルランド17.5%)と、異なる。ユーロとポンドと2つの通貨を用意しておかなければならないちょっと面倒な国境エリアである。
連合王国から独立したアイルランド共和国のポリシーは、ご近所の連合王国と同じ民族で同じ文化で一緒に暮らして行きたいが、我々は王室など持たず(イギリスの世話にはならない)自治していく。喧嘩する気などないが、いろいろなものを押し付けられるのは困る。こういうこことなのだろう。勝手ながら私はそう感じ取った。ちなみに、スコットランドもUKから独立を検討しているらしいがアイルランド共和国と、全く同じ考えでしかない。
1.アイルランド共和国のウェディングに関する法律、制度、その背景
元々、北アイルランド、アイルランド共和国(以下アイルランド)共にカトリックの国だったが、1800年代にイギリス王ヘンリー8世王がアイルランド(現在の北アイルランドも)を征服し、アイルランド領域のカトリックを廃絶し、英国国境会(プロテスタント)に改宗させた経緯がある。
しかし、その後、また、王が変わるとカトリックに戻ったりと国民は困惑した。現在のアイルランドは国家としては宗教に中立な立場を取っている。現在の信仰の割合を見ると、国民の約90%近くがカトリック。カトリック以外ではアイルランド国教会(プロテスタント)、長老派教会、メソジストと続く。
婚姻について、法律では以下の3つを婚姻の条件として定めている。
・国が認定した宗教的教会で結婚式を挙げること。
・国が認定した会場(ホテル等)で結婚式を挙げること。
・市役所の戸籍登録所にて戸籍の登録と結婚のセレモニー(司祭者は市役所職員)を行うこと。
この結婚方法の3つはイギリスに於いても同じである。
イギリスと異なるのは、アイルランド国民の大半はカトリックであると言うこと。
カトリックは離婚を正当としていないため、再婚時にカトリック教会で結婚式をする場合、手続きが面倒となる。カトリック教徒の離婚、再婚については、アイルランドやヨーロッパを問わず、アメリカでも同様に発生する手続きをクリアする必要がある。
再婚するためには、カトリックのある機関から、「前回の結婚は無効」という証明書を取り付ける必要がある、
それがあればカトリック教会で2回目の結婚式をすることができる。が、2度目の結婚式をカトリック以外で挙げる(人前結婚式など)場合はそれらの手続きは不要となる。
アイルランドは、カトリック教徒が9割を占める国である。カトリック教会での挙式は多いのは当然だ。
キリスト教は安息日である毎週日曜の午前は教会で礼拝(日曜学校)がある。教会としては、このミサは最優先である。
教会側からすれば、「教会は結婚式する場所じゃないですよ!」というのが、理屈である。つまり、日曜日は教会結婚式は行われず、大半は、土曜日に行われる。(キリスト教においては普通の事)
最近、結婚式が出来る認定を受けるホテルは増えているとのことだった。
2.アラン島訪問
観光地もあり遺跡や、環境保護地区、古い街並みのある小島のアラン島に渡航した。
訪れたのが土曜日であったため、島の教会では結婚式も行われていた。狭い道に面して建つ教会での結婚式である。そのため、道は渋滞となったが、そこは小さな島でのこと、混乱は生じないのである。
2−1.アラン島のケルティックウェディング
アイルランドにキリスト教が入ってくる以前は、太陽や、自然に感謝をする宗教だったそうである。アイルランドは、緯度でいうと北海道より北にある樺太の北部に相当する。陽を照らす太陽には感謝の気持ちは大きいだろう。そのいわゆるケルト人信仰で式を行うウェディングがケルティックウェディングである。
日本で言えば神前式に相当するだろうか。まあ、日本人とケルト人の宗教観は異なるだろうが。
これまた予断だが、世界各地で、日本で言うところの神道に当たるが、民族宗教というのがある。そこへキリスト教は、船でやってきて、布教をし改宗させたわけである。日本はそれを阻止するために、鎖国政策を取った。日本という国を守るためのサクセスストーリーとなったわけである。お蔭様で、日本は現在、宗教戦争など起きない国家になった。
ケルティックウェディングだが、大自然を中の公園、教会、海を臨む広場などなどで行われる。セレモニーを行う会場内で、新郎は男性の強さの象徴である大きな石(ホーリーストーンと呼ぶ)の前で、そして、新婦は女性の象徴として泉(ホーリーウェルと呼ぶ)の前で各々司式者の説教・祝福を受ける、その後、新郎新婦は整列し、誓いの言葉を述べ、指輪の交換を行う。進行内容としては、日本で言う人前結婚式のような感じである。
以下はケルティックウェディングの進行(ホームページから引用)
@ 花嫁への祝福
清水の涌(ホーリーウェル)で司式者が新婦へ祝福を述べる。
A 花婿への祝福
ホーリーストーンの前で司式者が新郎へ祝福を述べる。
B 誓いの言葉
新郎新婦が誓いの言葉を述べる。
C 指輪の交換
指輪の交換
D ウィッシングストーン
新郎新婦、司式者、立会人それぞれがスカーフを通し、ふたりの幸福を祈る。
式の最中は生演奏が入り、式の時間は40分ほど。
2−2.アラン島唯一のホテル アラン島ホテル(Aran Island Hotel)の訪問
島唯一のホテルともなれば、結婚式場として認定を受けているはずである。昼食を食べに訪れたホテル、ホテルの入り口には、「素敵なウェディング出来ます!」と言わんばかりのショーウィンドウが迎えてくれた。
披露宴はホテル内のレストランでも出来るが、欧米では一般的でもある、仮設のバンケット(テントルーム)もホテルエントランス横にセッティングされていた。
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Aran island hotel(アラン島ホテル) |
ホテル入り口のショーケース |
ホテルフロント横の看板 |
フロントに事情を話し、婚礼用のパンフレットを1セット頂いてきた。パンフレットの1ページを記載すると、
プランの一例(価格は記載がなかった)
Options(オプション商品)
3.エニスティモン(Ennistimon)のフォールズホテル(FallsHotel)訪問
これまた、面白がって、とあるホテルのレストランを訪れると、白いリボンでデコレーションされた、車が止まっていた。私は、国内外を問わず、ホテルに入ると、一人見学ツァーを行う。裏動線で従業員とばったり出会っても、堂々と挨拶を交わせば向こうも、どうせ業者の誰かだろうと思ってくれるというわけだ。バンケット(宴会場)を拝見した。ウェディングレセプションが行われた後だった。と言うより、昨晩遅くまで盛り上がったと言う雰囲気。一晩経った翌日、新郎新婦や業者達がその片づけをしているところだった。聞いてみると120名の宴会だったそうだ。
ホテルの外に置いてあった、白リボンの付いた、アウディはきっと宿泊して今日帰宅予定の新郎新婦のものだろう(自家用かレンタカーかは解らないが)。
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FallsHotel |
ウェディングカー |
バンケット |
ホテルが提示しているプランの一例(冬の閑散期の特別割引プラン)
一人当たり、€40-以下のプラン
お料理メニュー
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席次ボード |
演出品 |
演出品 |
4.宿泊したホテル、ゴールウェイのクライバーンホテルにて
それなりに大きなホテルである。住宅街の中にあることもあり、食事はホテル内のレストランで済ませた。
夕食に向かう途中ロビーで、なんとも華やかなドレス姿の若い女性がたくさん待ち合わせでいた。ドレスと言ってもンフォーマルではなく、パーティ服(日本の披露宴で言うと、お呼ばれ友人の服装)。
フロントで、何のパーティがあるのか聞いてみると、Hen Party と返答があった。
欧米では、一般的である、結婚前の新郎は男性友人だけで、新婦は女性友人だけで、それぞれ楽しむパーティがある。飲み会を指すように思えたかもしれないが、男性友人みんなで集まって野球をするとか、釣りをするとかラジコン模型を楽しむなど結婚前のやんちゃ騒ぎというものである。
英語で、Stag(おんどり)、Hen(めんどり)を意味することから、男性のパーティをスタッグナイト(スタッグパーティ)、ヘンナイト(ヘンパーティ)などと呼ぶ。
正にこのHen Partyがホテル内のレストランで行われていた。大きな声が聞こえてくることから、酔っ払いの大騒ぎのパーティに見えた。
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ホテル内のレストラン |
ホテル内のレストラン |
ホテル内のバンケット |
余談だが、イギリスのチャールズ皇太子も、結婚式前に、ロンドン市内のレストランを貸切にして、ドンチャン騒ぎをして、大暴れの結果新聞に報道されるなど問題になったこともある。このように誰も彼も行うパーティであって、このパーティをプロデュースする会社も多数ある。
5.アイルランドの首都ダブリンにて
街中を散策した。ドレス屋さんや書店を回って書籍を求めたりと情報を集めてみた。
ドレスショップの店頭もウェディング雑誌でもそして、先に記載したFallsホテルのフロントでも、
1週間後に開催のウェディングショーの宣伝が多くあった。
これは、ロンドン市内のコンベンションホールのEarlsCourt(アールズコート)で開催の「The National Wedding Show」のことで、これから結婚式をしようとしているカップルを対象とした、結婚式場、プロデュース、ドレス、花、写真、音響・・・の展示会である。アイルランドの結婚式に関しても多数出展があるようだ。アイルランド+UKのトレンドを探しにいくのであれば、ダブリンから飛行機で1時間のイギリス・ロンドンへと言うことである。この新郎新婦を対象にしたショーは、日本ではあまりメジャーではない。話は簡単でお客さんが入らないからである。が、欧米では一般的である、このロンドンのウェディングショー、入場料金は無料ではなく、2000円〜3000円ぐらいとなる。まあ、無料で入る方法はいろいろあるが。
このショーの主催会社の纏めた資料で面白いものがあったので紹介する。アイルランド+UKの結婚式の平均値である。
5−1.ドレスのトレンド
アイルランドのドレス屋さんそして、ウェディング雑誌を見ると、今のヨーロッパのウェディングドレスのトレンドは、マーメードラインデザインのようである。
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ダブリンのドレスショップ |
ダブリンのドレスショップ |
ダブリンのドレスショップ |
日本でのウェディングドレスのデザインの定番は、Aライン、プリンセスラインデザインであるが、これは日本人の体型に合っているということもあるだろう。
ここ最近ヨーロッパのウェディング雑誌では、マーメードライン(人魚のようなデザイン)のドレスの写真が多い。スレンダーライン、マーメードラインと言うデザインは、背が高く、いわゆるスレンダー体型のに似合うデザインである。つまり、白人だから全員が似合う訳でもない。当然、実際に着られているのは、定番のAライン、プリンセスラインも多いということが想像できる。マーメードラインは可愛らしいデザインでもあるので、日本でもマーメードがどんどん流行ると素敵だなと感じる。
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Aライン |
プリンセスライン |
マーメードライン |
Aライン(デザインがローマ字のAの形になっている)
プリンセスライン(背のトレーンが長いもの)
アイルランドのドレス屋さんや雑誌で見かけた、マーメードラインのドレス(結構な流行りようだ)