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作成:2015/9/25 



スコットランド グレトナグリーン訪問レポート

(駆け落ち婚の聖地、今では結婚式の名所)

 

MC 恋塚 太世葉

URLhttp://www.h5.dion.ne.jp/~peewee 

E-mailpeewee@k6.dion.ne.jp

 

イングランドとスコットランドは国は違えど、王様も、通貨も同じであり、行き来も自由な連合王国である。

イングランドとスコットランドの国境(スコットランド側)にある小さな町、グレトナグリーンを訪問した。

 

このグレトナグリーンは、その昔、イングランド人達の駆け落ち婚の聖地であった。

1700年代前半の事、イングランド、スコットランド、ウェールズの婚姻年齢は、男性14歳以上、女性12歳以上、そして当人達の意思表示のみで婚姻が認められていた。自由な結婚環境ではあったが、貴族など金持ちの娘をたぶらかす結婚詐欺、事実婚、重婚などが横行する世の中にもなり、社会問題に発展していた。

解決策の1つとして、イングランドで、1754年ハードウィック婚姻法が発布された。主な内容として、

「結婚を望む2人は教会で挙式をすることのみならず、親の許可と両者が21歳以上であること。」とあった。解説すると、婚姻年齢は男女ともに21歳以上に引き上げられ、更に両親の承諾が必要となったということ。これならば結婚詐欺の有効な対策になったと言える。

しかしこの法令がもたらすものはメリットばかりではなかった。

ヨーロッパ全土、当時は厳しい階級社会であり、王族、貴族、由緒ある家、そして一般民衆ではそれぞれ口にする紅茶のグレードも暗黙で決まってたと言うほどだった。

そんな環境下、家柄、身分の違う男女が結婚したいと言っても、親が認めるはずなどなく、自由な結婚に制限が発生してしまったのである。そうなっては大変と、この法令発布の前日の1754325日にはロンドンのフリートとその周辺にて217組の挙式が行われたという記録も残っている。

ところが、イングランドで制定されたこの法律はスコットランドには適用されることはなく、スコットランドでは男性14歳、女性12歳、親の承諾は不要のままだった。親から結婚を反対されたイングランドのカップルは、スコットランドへ向かい結婚式をしたという。一見素敵な物語に聞こえるが、言い方を変えれば単なる「駆け落ち婚」である。

しかし、そのような法の抜け道がありながらも、実際のところ、スコットランドへ逃れての駆け落ち婚はそう簡単には実現しなかったと言う。

紳士の国イングランドに於いて、「あそこの家の長男は身分の違うどこどこの家の娘と駆け落ちしたそうだ!」なんていう噂が広まれば、その家の代々守ってきた家紋に傷がつく。伝統を重んじるイングランド人には決してあってはならないことでもある。家族は、スコットランドへ馬車を走らせるカップルを、必死に追いかけ国境越えさせないように引き返えさせたそうだ。

だからこそ、スコットランドを目指すカップルは、国境を越え、場所はどこであろうと真っ先に場所を探し、立会人を見つけ、挙式をした。

アンティーク 絵はがき

 

タイトル:Pursued(追跡される)

 

「馬車に乗り、北を目指すカップル。馬車の後方を不安そうに見ている。やがて激怒した父親が馬車に追いつこうと現れる。」と書かれている。

 

 

 




イングランドから、峠(現在はイングランドとスコットランドを結ぶ幹線道路)を越えてスコットランドへ入り、最初に位置する町がグレトナグリーンである。そこには数軒の鍛冶屋があった。

この町にたどり着いたカップルが、鍛冶屋に駆け込み、鍛冶屋のオヤジに挙式の立会いをしてもらったことから、この鍛冶屋達は、イングランドから駆け込んでくる駆け落ちカップル達を大歓迎し、鍛冶屋の作業場で安価に挙式を行うサイドビジネスが始まった。

そのグレトナグリーンだが、今では、観光スポットともなり、由緒ある鍛冶屋?の作業場で、現在も結婚式を挙げることができる。

1710年頃創業の代表的な鍛冶屋2軒が今も保存されている。

グレトナホール・ブラックスミス・ショップと、オールド・ブラックスミス・ショップである。

グレトナホール・ブラックスミス・ショップは、現在ホテルとして営業されており、この鍛冶屋式結婚式を行うこともできる。また、オールド・ブラックスミス・ショップは、ドライブイン機能も備えた、結婚式博物館になっている。もちろんここで結婚式をすることができる。

 

Gretna Hall Blacksmiths Shop(1710)

 

The Old Blacksmiths shop(1712)

 

余談だが、この施設名に含まれる「スミス」だが人名が由来している訳ではない。「Smith」は古英語で「打つ」を意味する「Smite」が語源であり、「鍛冶師」の意。

英語で一般に鍛冶屋のことを「ブラックスミス」と呼ぶが、ブラックスミスは黒金を意味し鉄を加工する人、金加工はゴールドスミス、銀はシルバースミスなどと言い、これら金属を加工する職人全般を「メタルスミス」と呼ぶ。単に「スミス」という場合はブラックスミスを指す。そして、後に鍛冶屋の仕事に由来した人たちが苗字としてSmith(スミス)を名乗ったのだという。

私は、結婚式博物館のあるオールド・ブラックスミス・ショップへ行ってみた。そして早速結婚式博物館に入ってみた。

たくさんの歴史的資料、ドレス、再現された鍛冶作業場などの展示があった。挙式場は鍛冶屋の作業場であるから、鳴らす鐘もなければ、ステンドグラスなど装飾品もない。新郎新婦の誓いは鉄を叩く、金台と金槌(ハンマー)である。ここで挙式を施工した司式者(鍛冶屋のオヤジ)は金床の司祭(anvil priest)と呼ばれた。

 

 

結婚式博物館

 

 

結婚式博物館

 

結婚式博物館

 

 

結婚式博物館

 

結婚式博物館

展示写真

 

結婚式博物館

 金床を叩かせてもらった

 

ここはたくさんのカップルが生まれた歴史的場所でもある。現在でも、ここグレトナグリーンでは結婚式をするために海外からもカップルがやってくるというがその数、年間1,000組というから驚きだ。

そして、俗語だが、イングランドでは、駆け落ち婚をグレトナグリーン婚とも称するそうだ。

長々と書いてしまったがまとめると、このグレトナグリーンの物語は、「イングランドで成立した新たな法案をスコットランドは支持せず、その法案に困り果てた駆け落ちカップルを歓迎し支援した。」という話である。

 考えてみるとスコットランドの国民性が伺えるように思う。
実はスコットランド人に共通して言えることが1つだけある。それは、「イングランドが嫌い」ということである。

 

恋塚太世葉(こひづかたせは) 

l  ブライダルMC

l  全日本ブライダルMCアライアンス 会長

l  全米ブライダルコンサルタント協会 認定 上級ウェディングヴェンダー

l  Weddingsbeautiful Worldwide 認定 ウェディングスペシャリスト

著書:ブラダル司会レミハンドブック(杉並けやき出版)

ブライダル博士のハドブッ(杉並けやき出版)